つむぎ流読書のすすめ:作家さん編~②加納朋子さん~

最終更新日時 : 2017/11/13
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書籍のイメージ

 

こんにちは!つむぎです。
「つむぎ流読書のすすめ:作家さん編」ということで、今年めぐり逢った大好きな作家さんおふたりめ、加納朋子さんをご紹介します。

映画「トワイライトささらさや」に興味を持って調べていたら、その原作者が加納朋子さん
で、「原作を読んでみよう♪」と、その書籍を手にとったのがめぐり逢ったキッカケ。

この方の世界観は、やさしさにあふれていて、どこかしらに不思議の香りが。。。
読了した多くの作品の中には、社会性のあるテーマがそっと取り上げられていて、そこに加納さんのメッセージを感じます。
「ご自身が乗り越えてきたからこそ描ける臨場感」や、「その立場に立った人の心の葛藤」などが、やさしい文章の中で、あくまでさり気なくさらっと紡がれていて、「読み終わった後、心に深い余韻を残す感性」を持たれた作家さんだと感じています。

と、前置きはこれくらいにして、今までわたしが読んだ加納作品をご紹介します。
※ちなみに、読んだ順に記載しています。

 

作品 あらすじなど 感想

「ささらさや」

ささらさや
幻冬舎文庫

ちょっと頼りない新米ママのサヤを、ゴーストになった夫がやさしくそっと見守り続ける。
そこは不思議と日常が交差する佐々良の街。
新米ママのサヤに、次々難題が振りかかる。
ゴーストになった夫は、彼が見える人の姿を借りてサヤを助けに。
サヤはあたたかな佐々良の人たちとの出会いの中で、すこしずつ強い母へと成長する。
そして、夫の旅立ちの時が。。。

不思議の街、佐々良を舞台にした、「ささらシリーズ3部作」の第1作目で、「トワイライトささらさや」として映画化された本作品。
「架空の街佐々良って、ホントに存在するんじゃないかな?」って想えるほど、自然な街の描写と、そこに住まうあたたかくってやさしいひとたち。
現実世界でも、間接的に何かに守ってもらっているような感覚や、不思議なことを少なからず経験しているひとは多いのではないでしょうか?
ちなみにわたしはあります。^^
そんな少しの不思議の感覚と、「ささらさや」とサラサラと流れる心地いい川の流れのような、それでいて心に余韻を残す、一気に読めて、読後感も素敵な作品です♪

「てるてるあした」

てるてるあした
幻冬舎文庫

親の夜逃げのため、「佐々良」という町に住む母の知り合い「久代おばあさん」を頼ってきた中学生の照代。
面識のない厳格な久代さんとのぎこちない暮らし。
せっかく合格した高校にも、家の事情で通うことができない哀しみ。
自分をある意味捨てた親への愛憎、なれない街での暮らし、初めての人たちとの関わり、少し世間を斜に見るような照代。
そんな照代は、ある日、ひとりの少女の幽霊を度々目撃するようになる。
その少女の幽霊はなぜ、照代の前に現れるのか?
久代さんとその少女の幽霊に何があったのか?
佐々良の人々との交流、日々の暮らしの中で、謎が少しずつ明らかになっていく。。。
両親から愛情を感じることが出来なかった照代が、佐々良の人々の温かさの中で、ひとりの少女から大人へと成長していく物語。

不思議の街、佐々良を舞台にした、「ささらシリーズ3部作」の第2作目。
物語の底辺には、「ネグレスト」の問題も深く関わっていて、実際の内容はかなり深刻な問題定義もされている作品。
それでも重くなることなく、全編を通して流れる、照代を見守る佐々良の人たちの心のあたたかさが、この物語をやさしさで包んでいる。
やさしさでくるまれた人の物語を縦糸に、佐々良でおこる不思議な事象を横糸に紡ぎながら進んでいく物語。
最後の最後で明かされる、「あっ!そういうことだったのか!」と思わせる謎解きと、大切な人との別れ。
最後の1Pを読んで本を閉じた時、涙が後から後から流れて、ちょっと大変なくらい感動した作品。

「てるてるあした、きょうはないてもあしたはわらう」
「笑顔が明るい明日を開いていく。明日は笑顔で顔晴ってみようか?」
そんな勇気をもらえる作品。
オススメです!。

「はるひのの、はる」

はるひのの、はる
幻冬舎

「ささらさや」で生まれたばかりのユウ坊が大きくなって登場!
みんなには黙っているけれど、実は「この世から旅だった人」がみえる不思議な力をもつユウスケ。
ある日、そんなユウスケの前に「はるひ」と名乗る女の子が現れる。
初対面のはずなのに、なぜか「はるひ」はユウスケのことやユウスケの不思議を知っていた。
時を越えて、めぐり逢う「はるひ」とユウスケ。
そこには、思いもかけない真実と「はるひ」の想いが。
時空を越えて、ちょっとせつなくも、やさしい物語が紡がれていく。

不思議の街、佐々良を舞台にした、「ささらシリーズ3部作」の最終作。
大きくなったユウスケの理解者である、やさしい母サヤもちょっとだけ登場。
ユウスケの同世代の仲間たちと不思議な「はるひ」が、それぞれの時、それぞれの場所で紡いだ物語が、ミステリアスに展開され、つながっていく。
時系列の違うそれぞれのストーリーが紡がれた時、「はるひ」の正体とその想いがあきらかに。
「え!そういうことなの!」っていう驚きが。。。
前2作にくらべて、ミステリー色がこい本作品。

最終ページを読み終えて、
「ユウスケやサヤが、不思議の街、佐々良でしあわせに未来を紡いでいくんだろうなあ。」
って、そんな余韻を残しながら、読了した作品です。

「トオリヌケキンシ」

トオリヌケキンシ
文藝春秋

障害・病を持った登場人物たちが織り上げる6作の短編作品集。
引きこもりになってしまった少年とある少女の物語。
~『トオリヌケ キンシ』~
「共感覚(一瞬見たものをすべて記憶できるという記憶力など)」をもつ女性の物語。
~『平穏で平凡で、幸運な人生』~
母からのつらい仕打ちにたえたある少年の心の葛藤を描いた物語。
~『空蝉』~
人の顔の識別ができない男子高校生の恋を描く物語。
~『フー・アー・ユー』~
愛妻をなくしたおじいちゃんと「座敷童?」の物語。
~『座敷童と兎と亀と』~
「明晰夢(自分で夢であると自覚しながら見ている夢)」を見る青年と不思議な少女「ミナノ」の物語。
~『この出口の無い、閉ざされた部屋で』。~

どの作品も、重い問題提起があるように感じられる作品たち。
その中で、特に印象に残ったのが下記2作品。

幼児虐待をあつかった「空蝉」。
読んでいてその描写のリアルさに戦慄し、虐待をうけた男の子の心の移ろいが哀しくていとおしくて、涙が。。。
彼を虐待から救い出した「イマジナリーフレンド(想像の友達)」の真実の姿。
「子どもの心に残る傷を癒やすむずかしさ」を、本作は問いかけているように感じられた。

人の顔の識別ができない男子高校生の恋を描く物語、~『フー・アー・ユー』~。
障害を自分の個性と考えることで、周りとの関わりのハードルを越えた少年。
そして、その彼を明るく受け入れるひとりの少女との恋。
少年の心の強靭さとしなやかさ、そして社会のあたたかさを垣間見た気になれる作品。
6作の中で、もっとも明るさを感じた作品です。

「ぐるぐる猿と歌う鳥」

ぐるぐる猿と歌う鳥
講談社文庫

父の転勤で北九州の社宅へ引っ越して来た高見森(たかみしん)は、独特の九州弁に四苦八苦。。。
その言葉の壁?を乗り越えて、森は持ち前のたくましさで同じ社宅に住む子どもたちと仲良くなっていく。
突然、現れては消える不思議な少年「パック」。
その「パック」を守るため、子どもたちはある秘密を共有していた。。。

こちらの作品、子供向けということですが、大人が読んでもとっても考えさせられる作品。
子供の目から見た大人世界の理不尽さ。
生きているのに、社会から消えたこどもたちの問題。
「この国のどこかに、同じような深刻な問題が潜在化しているのではないか?」と考えてしまうテーマを、物語の底流にもった作品。
そんな大人社会の理不尽さも、持ち前の行動力と明るさで、ピンチをチャンスに変えていく子どもたちのたくましさ。
加納さんのペン先は、この相反する感性をあくまでさらりと軽やかに織り上げます。

大人にこそ、ぜひ読んでほしい!
考えさせられる秀作です。

 

繊細でやさしい感性で紡がれた、加納朋子さんの作品たち。
あなたも、加納作品のやさしい世界の余韻を感じてみませんか?

 

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